HUB-IBARAKI ART COMPETITON 2014
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HUB-IBARAKI ART COMPETITON 2014 開催概要
作家公募期間
2014年8月11日(月)~10月10日(金)
準備期間
2014年11月~2015年2月中旬
展示期間
2015年2月14日(土)~8月13日(木)
作家・作品
つちやあゆみ《歯車のオルゴール》
山下 拓也《MUSEUM》
テーマ
アートと人の出会いの場、アートを介した交流の場の創造
プロジェクト内容
作品展示、作品完成発表会 & アートツアー、2種類のプログラムを実施
実行委員長
河上 友信(茨木芸術中心)
事務局
茨木市文化振興課
主催
茨木市若手芸術家育成事業「HUB-IBARAKI ART」実行委員会(茨木市・茨木芸術中心)
ごあいさつ
平成25年度よりはじまった茨木市若手芸術家育成事業『HUB-IBARAKI ART COMPETITION』は、未来を担う若手アーティストを発掘し、茨木のまちを発表の場として提供することで、地域の芸術文化の発展に貢献することを目的としたソーシャル・アートプロジェクトです。
本コンペティションは、「公共空間での展示」、「6か月間の長期展示」、「まちや人との交流を持てるような作品の選定」を条件として作品を選出し、アートを媒介とした人と人との対話が生まれることで、永続的な地域の活性化へ繋がるネットワークの中心「HUB」のような存在となることを目指します。
第2回を迎える今回も厳正な審査の結果、若手作家2組が選考されました。茨木の公共施設を利用したアート作品が、2015年2月14日(土)より茨木の施設にて展示されます。よりたくさんの人がアートに触れられるように連動企画イベントも開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
選定作家
つちやあゆみ [TSUCHIYA Ayumi]
1982年神戸市出身。会社勤務を経て、2008年に多摩美術大学造形表現学部デザイン学科に入学。空間デザインを学ぶ。2012年に同学部を首席で卒業後、おおさかカンヴァス2012選出を機に制作活動を始める。
●最近の活動
2014年 あべのハルカス(大阪)
2014年 浜田市世界こども美術館(島根)
2013年 なんばパークス(大阪)
2013年 知恩院三門前(京都)
2012年 ツムテンカク(大阪)
2012年 水都大阪フェス(大阪)
●受賞歴
2012年 おおさかカンヴァス選出
2013年 One Show Interactive Merit Award
2013年 神戸ビエンナーレ「アート イン コンテナ」入賞
http://www.tumblr.com/blog/ayumitsuchiya
山下 拓也 [YAMASHITA Takuya]
1985年三重県出身、2010年名古屋造形大学美術学科総合造形コース卒業、2013年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了
●最近の活動
2014年〈UNDER35/2014 山下拓也〉 BankART studio NYK(横浜)
2014年〈TALIONの子〉 TALION GALLERY(東京)
2014年〈museum〆an〉 中村キースへリング美術館(山梨)
2014年 〈雨F蘭〉〈絵〉 ART OSAKA 2014/ARTCOURT Gallery(大阪)
2014年〈NEXT EXHIBITION / 大木裕之『うちんこ 2』〉 Art Center Ongoing(東京)
2014年〈GEISAI#18 和多利浩-賞受賞山下拓也個展〉 Hidari Zingaro(東京)
●主なグループ展
2013年〈あいちトリエンナーレ 2013〉 長者町会場、松本町会場(愛知)
2014年〈COVERD TOKYO Hikarie 2014〉 Shibuya Hikarie 8F 8(東京)
2014年〈ヨコハマトリエンナーレ2014 創造界隈拠点プログラム/東アジアの夢 BankART life4〉BankART sutdio NYK(横浜)
●受賞歴
2013年 GEISAI #18 和多利浩一賞(審査員賞)
2013年 京都市立芸術大学作品展 大学院市長賞
http://takuya-yamashita.com
開催プログラム
作品発表
HUB-IBARAKI ART COMPETITION+EXHIBITION
日時|2015年2月14日(土)~8月13日(木)
会場|茨木市民会館1階エントランス、福祉文化会館1階エントランス
◇ つちやあゆみ《歯車のオルゴール》
会場|旧市民会館1Fエントランス
私の作品は、一般市民の方々のいままで美術に触れたことない人たちに向けて、気軽に楽しんでもらえるような作品を目指して制作しています。子供美術館や病院のエントランス、リハビリ施設などに設置されることもあります。過去の作品《輪唱の◯》は、以前ヤノベケンジさんが審査員をされている「おおさかカンヴァス2012」に出展させていただいた作品で、多くの木琴のパーツを入れ替えて作曲・演奏できる作品になっています。その作品が今回の作品《歯車のオルゴール》にとても影響を与えています。
《歯車のオルゴール》は、大きなハンドルを回すことで歯車が連動し回り出すことで音楽が鳴り出します。それぞれの歯車には「ドの音」から「ラの音」までの木琴がひとつずつ設置されていて、音が鳴るような仕掛けをしているので、ハンドルを回すことで音楽が鳴り出すようになっています。現在は「かえるの歌」に設定していますが、展示期間中に他の曲にも替えていければと思っています。(※実際、展示期間中に「かえるの歌→かっこう→海」と編曲を行いました。)現在、茨城県の筑波市で活動中ですので、年末年始2か月間かけて作品制作を行いました。作品は、搬送の関係もあるのですが、現地(茨木市)での組み立て式にし、現地での作業は搬入・作品調整のため2日間滞在しました。
組み立て式にした理由には、もう一つあり、私は茨木市で制作させて頂いたこの作品を、また別の場所で展示発表できればと考えています。展示現場での搬入時に起きたストーリーで、1日目にたまたま通りかかった市民の方が手伝ってくださったのですが、2日目現場に行くと、その方が待っていて驚きました。その他にも、搬入で私の手が空いていない時は、別の市民の方に作品の説明をしてくださったりと、いろいろな出来事がありました。
制作した作品は、一人で持つには少し重たいもので、そんな時に通りがかりの市民の方がいるとチャンスだと思います(笑)。茨木市にはそのように助けて下さる方々がいるまちだと知っていたので…以前茨木市で2012年に開催された茨木音楽祭(茨木神社)に出展させていただいた際、いっぱい手伝っていただいたことがあったので安心していました。
茨木市は「茨木音楽祭」などの音楽に造詣が深いまちでもあるので展示開催期間中は、茨木市のイベントに合わせて、ワークショップなどの開催も行いました。
◇ 山下 拓也《MUSEUM》
会場|福祉文化会館1Fエントランス
今回制作した作品は茨木をリサーチすることからはじまりました。まず、このコンペに応募しようと思い、茨木のまちを散策しながら市役所にたどり着きました。その散策の中で受けたまち印象は、鳩のシンボルマークや薔薇のサインがいろんなところにあったこと、まちのあらゆるところにある彫刻が目に入ってきました。もっとみていくと、憲章や市歌がまちに多く存在していることに気づきました。それらを見ていく中で、茨木にあるサインやシンボルの「イメージ」、また憲章や市歌などの「言葉」を使って作品プランを考えはじめました。
作品設置場所も複数拝見させていただき、その中でも味があるというか、建物に特徴がある「福祉文化会館」を展示場所に選びました。作品制作は、油粘土を大量に用意し、先ほど話していた、まちに設置されている憲章やシンボルを粘土でトレースし、それを再構築することで新しい市歌やシンボルを創りだそうと目指しました。その行為を何度も何度も繰り返すことで、新しい形になっていっていることを感じ、また自分自身も気付かされることがありました。
僕は名古屋出身なのですが、茨木市に10日間滞在制作を行いました。毎回制作する際は、制作された作品を展示場所に持っていくのではなく、場所を観察し、そこでなにができるのかということを考えて作品制作を行っています。実際に集めた文字・言葉は「理想の都市」「幸福」「生きる」「希望」などの前向きだけども、少し身構えてしまうような言葉を選択していきました。中に入ってグルっと回って見てもらうような展示スペースも制作し見るだけではなく体感できるような、ギュッと凝視した新しい茨木市のイメージを作れたのではないかと思っています。ただ、この作品を見た茨木市の人たちが実際どのように思うのかは、少し心配しています(笑)。
関連イベント
作品完成発表会 & アートツアー
日時|3月14日(土)13:00-15:00
会場|茨木市役所南館1階交流センター(駅前三丁目8-13)
ゲスト|ヤノベケンジ ( 現代美術作家/京都造形芸術大学ULTRAFACTORYディレクター)
作家選考について
◇ 作家公募概要
公募期間|2014年8月11日(月)~10月10日(金)
【応募資格】
・国内外を問わず、創作活動をしている作家。
・2014年4月1日現在、45歳以下であること。
【制作作品規格】
・素材、形態は問いませんが、展示場所での長期展示に耐えるもの。
・展示する施設の用途、機能を損なわないもの。
・展示する施設の用途、目的を理解し、その空間にふさわしい作品であること。
・電源の使用は不可とします。
【審査基準】
・単に美術作品として優れているかどうかではなく、茨木という地域の魅力を一段と引き出せるようなコンセプトであるか。
・また、施設の用途・目的・機能を理解したその空間にふさわしい作品であるか。(公共の場での展示となるため、政治的/宗教的/性的/暴力的/営利的等の表現、法令、公序良俗に反する画像、文字等を使用した作品構想図については、審査の対象とならない場合があります。)
◇ 審査について
【作家公募 審査員】
木村 光佑(版画・彫刻家/京都工芸繊維大学名誉教授・元学長/茨木美術協会会長)
名和 晃平(彫刻家/「SANDWICH」ディレクター/京都造形芸術大学准教授)
原 久子(アートプロデューサー/大阪電気通信大学総合情報学部教授)
ヤノベケンジ(現代美術作家/京都造形芸術大学ULTRAFACTORYディレクター)
審査講評
木村光佑 (版画・彫刻家、京都工芸繊維大学名誉教授、茨木美術協会会長)
私は地域社会の中で、アートはどのような役割が果たせるのか、社会貢献にどう結びつくのかを基本に審査した。作品が展示される場所は、様々な考えを持った人やいろんな立場のひとが行き交うところなので、アートを通して、どんなコミュニケーションが生まれるか楽しみだ。今回選ばれた作品は2点とも、実績のある作家だった。きっと、市民との良い関係が生まれると思う。若手育成を目的にした事業だから、応募してきた作家の持っている可能性を、少しでも引き出すことに役立てれば思っている。
名和晃平 (彫刻家、「SANDWICH」ディレクター、京都造形芸術大学准教授)
既に完成した作品の応募ではなく、作品のプランのコンペなので、作家の自由な構想や妄想が垣間見ることができ面白かった。設置場所が予め決まっているわけでは無いため、より自由に発想しているように感じた。一方、実際に作品化できるのかどうか判断が難しいプランも散見された。この事業の主旨がアートプロデュース型であり、作家に丸投げではなく、共に作り上げる態勢そのものに意義があるように思う。質の高いアートの創出に期待している。
原 久子 (アートプロデューサー、大阪電気通信大学 総合情報学部教授)
茨木の地域性についての調査、また空間とどう対峙するかを深く考慮した作品プランなど、質の高い計画書が多く見受けられた。そのなかで、選考に残った2つのプランは作品としての造形的なインパクトと、親しみやすさという点に於いて群を抜いて優れていた。人々が参加することによって成立する作品は,紙上の計画のみならず、その物理的強度の面を裏付ける実践力も必要なので、これまでの実績も含めた最終選考となった。
ヤノベケンジ (現代美術作家、京都造形芸術大学ULTRAFACTORYディレクター)
喜ばしいことに今回も高いクオリティとバラエティに富んだ応募が多く選考に悩まされた。惜しくも選外だった作品もいつか紹介したい。選出された作家の山下氏は既に発表歴の多い若手実力派で、制作プロセスも他者と共有する作り方は多くの市民の参加が期待できる。つちや氏の音を使った作品も子供から老人まで楽しめる仕組みと造形力はアートの可能性を社会に広げるだろう。茨木がアートの街としてますます認知されるに違いない。